2006年5月14日日曜日

ラズベリーロード

 道の真ん中で彼女は突然立ち止まった。ぶらんと両腕を垂らしてぼうっとしている。瞳には目一杯の空が映り、雲の流れまで見えるようだった。どうしたの、と訊いても何も答えないし、動きもしない。仕方ないので僕らはここで休みを取ることにした。道の脇の草むらに寝転がってうとうとしているうちに夕方になっていた。まだ眠い目を擦って彼女を見遣ると、呆れた、先ほどとほとんど姿勢を変えずに立っている。仕方ないので僕らはここで野宿をすることにした。
「冷えるから風邪に気をつけてね」
 と言い残して横になったものの、やっぱり気になるのでそっと様子を見る。だけど彼女は空を見上げたままで、気付かぬうちに僕が眠っていた。
 太陽が昇るよりも少し前に僕が目を醒ますと、彼女はまだそこにいた。でも時折舟をこいでいる。もう寝なよ、と僕が呆れて言うと、彼女はようやく寝袋に潜り込んだ。その日の昼過ぎ、彼女は起きてまた空を見上げ始める。僕は傍らで本を読む。僕らには、時間だけはある。世の中の一部の人が、ない、ない、と喚くものを無駄遣いすることに何のためらいもなかった。
 こんな日が七日間続いた。八日目には雨が降った。
 朝から雲行きが怪しかったが、雨が正午前にとうとうぽつりぽつりと降り始めた。それでも彼女はまるで気にする風もなく空を見上げたままだったので、僕は傘を持って隣に立った。視界を遮らないように、気をつけて。間もなく地面に靄を作るほどの大雨になった。行こう、と言うことが無意味であることはもうわかりきっていたので僕は何も言わない。代わりに一緒に空を見上げた。隣では彼女が声も上げずにぼろぼろ泣いていた。僕が隣に立ったからでも、雨が降ったからでもない。彼女は最初に立ち止まった日からずっと泣いていた。僕は知っていた。
 それから一時間もしないうちに雨は止んだが、僕はしばらく空を見ていた。
 十二日目、いつものように本を読んでいると、彼女が僕の前に立った。
「気が済んだ?」
 と訊くと、うん、と答えたので、僕らはまた旅を続ける。彼女は美味しそうにリンゴを頬張る。
 僕らはもう、僕らが歩く道を戻ることはできないのだ。




 千文字世界投稿作。拙作は4point。投票してくださった皆様どもです。感想も同じく。
 で、結果発表。水池くんがタカスギさんを押し退けて王様をゲットですかー。王様になった記念にタカってやろうかと思ったけどもオフには行けないのでそれはまたの機会にしましょう。


 それにしても。
 17.mmが早々にネタバレされてしまったのが残念でした。あの作品はやっぱり自分の手で翻訳して(で、声も出して)ナンボだと思うのです。(二回目をやる気力はありませんでしたが(ぁ))
 

 別に大して面白くもないネタバレ。
 今回の拙作は、むかーし書いた短編(?)を改稿したものです。待つという行為は祈りにも似た静けさと、何かが来るという予感と焦燥がないまぜになったものがあるような気がしていまして。そういうものを内包しているのに外面はひどく穏やか。内面で渦巻くものに気付くのはやっぱり難しいんだろうねー、と書きながら改めて思ったりした記憶があります。
 で、それが今回白羽の矢に立たされたのは、うーん何故でしょうね? ぱらぱらと見ていたら「これしかない」というよりは「これ以外はない」みたいなよくわからない衝動に駆られたのでした。同じテーマでもう一度トライしてみたいなぁ。 
 というわけでタイトルは完全に後付けでした。以上。

2006年5月11日木曜日

三行日記191

 またしばらく消えます。
 千文字オフは行けないです。うー。
 気が付けばトーナメントの〆切が来ていそうで怖いので早め早めで。。。

2006年5月8日月曜日

三行日記190

 千文字世界の作者発表。
 選者×3とマンジュさんは大当たり(笑)。
 その他は大外れでした。うーん。 フレーフレーさかなさーん!

2006年5月1日月曜日

三行日記189

 千文字世界の投票〆切が7日らしいじゃないですか。かー。
 身辺がごたごたしている所為で実はじっくり読めていないのですががが。
 がーしかし、うん、あれだ。あれだよ。投票します。(いつになく冗長でした。)