2009年8月31日月曜日

黄金の舌を求めて

「黄金の舌を求めて」

 黄金の舌はこのうねうねと続く真っ赤なレンガ道を歩いていって、山をいくつも越えた先の高台にあるのである。
 長い坂道を登り切ったとき、私はパラサキの木に黄金の舌が生っているのを見つけることができる。黄金の舌は枝をしならせてだらりと垂れている。常にぼんやりと淡い光を帯び、先端は先細りになっており、そして緩やかに捻れている。葉は深緑だ。手を伸ばせば容易に届くところに生っている。
 私はそれを採ってもよかったし、そうしなくてもよかった。
 そのまま佇んでいるとやがて鳥が飛んでくる。真っ黒な鳥だ。小さな嘴を目いっぱい開き、キエエ、キエエ、と鳴きながらパラサキの木の上をぐるぐる旋回し始める。
 そして鳥は黄金の舌を啄み始めると根元を食いちぎり、毛虫を咥えるように黄金の舌を端から垂らして飛び行く。鳥の身一つ分はある黄金の舌が棚引きながら空へ消えていく。

��**

この頃はすっかり涼しくなって過ごしやすくなった。
早く温かい飲み物が合う季節になればいいのに。うーん。

��へんしん
ふっふーん(ニヤニヤ)。
じゃー、<5>で。<27>もあるかなあと思ったけど、こちらの方がよりそれっぽい。


2009年8月23日日曜日

第七回ビーケーワン怪談大賞

第7回ビーケーワン怪談大賞で、拙作「東の眠らない国」が「愉しませてもらいました賞(東雅夫選)」をいただくことになりました。ありがたい話です。

大賞には岩里藁人さん、優秀賞には沙木とも子さんと仲町六絵さん、佳作に影山影司さん等々、見知った方々がずらりと並ぶ様を見て「おお」と思わず漏らしてしまいました。皆様おめでとうございます。
特に岩里さんの受賞コメントを拝読すると、まだまだ敵わないなあと痛み入る思いです。


この一年は「怪談とはなんぞやか」ということを考えてきた一年だったと思う。ホラーや神話とは何がどう違のか、「怪談が好きだ」と言う人たちがどういう視点で怪談を見ているのか、恐怖という感覚をどういうものとして捉えているのか、諸々。実際にフィールドワークをして、観察とかもした。
この辺りのことは全部話そうとするとキリがないのでしないけども、「東の眠らない国」は一年間色々考えたことのまとめというのが個人的な位置付け。怪談で怪談を語ってみて、どういう反応が得られるのかがすごく知りたかった。
投稿した三作の中では一番神経と心がこもったものだったので、それが例えばこういう形で誰かのアンテナに引っ掛かったのは僕自身にとってとても救われる出来事だった。本当にありがたい話だと思う。




>ろくえさん
やー、どうも感想ありがとうございます。尻尾で連続だるま落としができそうなくらい嬉しいです(笑)。
ミルクは適当なタイミングで適当に入れてたもので。今度試してみまっす。

マネキン

「マネキン」

http://blog.bk1.jp/kaidan/archives/009876.html

第7回ビーケーワン怪談大賞投稿分

2009年8月4日火曜日

バルサの食卓

「料理本をつくりましょうよ!」
 ある日、新潮文庫の担当編集者Mさんが、ニッコニッコしながらそう言ったとき、正直なところ、私は、彼女がいきなり何を言い出したのかわかりませんでした。
「はぁ、料理本? なんの?」
「守り人シリーズとか、『狐笛のかなた』とか、『獣の奏者』のお料理の本ですよ! ね? 絶対あの料理を食べてみた~い、と思っている読者、たくさんいますよ」
 それを聞いて、私は思わず笑いだしてしまいました。
「あはぁ、そりゃ、ねぇ。……でも、あれは異世界の料理ですよ? ゴシャなんて魚、築地じゃ売ってないし、マイカの実なんてものも、この世にはないわけで……」
「やぁですねぇ、わかってますよ、もちろん。でも、猪はいるし、お米もあるし、作れる料理だってあるでしょう? ゴシャはなくても、白身の魚はいっぱいいるし、ナライの実の代わりに、上橋さんが頭の中で思い浮かべていた味に近い香辛料を使えば、近い味が作れるはずですよ!」

(上橋菜穂子・チーム北海道『バルサの食卓』新潮文庫)



という出だしにくらりときて、気付いたら手の内にあった『バルサの食卓』(上橋菜穂子・チーム北海道)。
今のところ上橋菜穂子作品は『獣の奏者』しか読んだことがないので、“守り人シリーズ”なるものに登場する料理はさっぱりわからんのだけども、最初の数行で「これはアタリだ」と直感して確信する。図書館でそのうち借りればいいやー、とかそんな悠長なことを言っていられるようなものではなくて、是が非でも手元に置いておきたいものだと思った。この種の勘で外れたことは滅多にないから大丈夫。うん。

自分は元々食が細い上に偏食なものだから、正直言って食をテーマにした物語でピンとくることはほとんどない。なのだけども、そういえば『獣の奏者』では「おいしそう」と思えるくだりがあったっけなあ、ということを帰り道にふと思い出す。とろとろ蜂蜜のパンはきゅんきゅんきたなあ、と。
あとがきを見てみると上橋さんに異世界料理に対する想いが切々と語られていた。あーわかるわかる。と帰りの電車の中、心の中で頷きまくる。
久々にいい買い物をした気分。ほっくほっく。

2009年8月2日日曜日

B・ドゥーラ『世界を読み解く蛙』の一節より

「B・ドゥーラ『世界を読み解く蛙』の一節より」

「蝿が象を乗せて空を飛ぶ。ありえないなんてことはない。わかるかい、ここはそういう場所なんだ」
 彼は私の頭を掴んでこう言った。月を飛び越える牛を見ながら私はつくづく、とんでもないところに来てしまったなあ、と思う。


��**

バベルの図書館に行けばこういうのがあるんだよ、たぶん。