2009年12月29日火曜日

ゆらりゆらら

「ゆらりゆらら」

ソファーでうとうとしているうちに世界は海の底に沈んでしまったらしい。天井は朽ちて剥がれていた。
日が出ているうちは燦々と光が射し青々と。日が沈めば朧な月がゆらゆらと。くらげが空を飛ぶ。鷲が水面を泳ぐ。リモコンでテレビをつければ魚人のフラダンス。
ここはいいぞぅ……。
ほわんとあくび。ぷかりと吐き出した風船が魂よろしく昇天する。あれが最後の空気だったと気付く頃にはまたうとうとソファーの上。

��**

ひょーたくんのお題その六。
夜、布団の中で半分寝ながら打つのが日課になりつつあるような。あと四日分くらいしかないけども。

2009年12月28日月曜日

間違い街角

「間違い街角」

行進公民館までですか? ややこしいので、よーく聞いてくださいね。
今私たちがいるのはここです。この道をまっすぐ行くと秘術美術館の前を通るので向かいの信仰信号をしきたりに従って渡ってください。そうしたら間違い街角を右に曲がってください。あ、でも間違い街角には気をつけてくださいね。右に曲がったと思ったらうっかり左を向かせられることもあるので。で、歩いているうちに洋式標識が見付かるはずです。"Sustaining bus stop"と言えば茄子バスを呼んでくれます。茄子バスに乗ったら避暑図書館前で降りて、放蕩横断歩道を定職に就かせてから渡ってください。後は張り切り踏切を落ち着かせて渡ればすぐですよ。でも行進公民館は結構足が速いので走らないと追い付けないかもしれません。


��**

張り切り踏切
放蕩横断歩行
信仰信号
洋式標識
因果レンガ
恍惚鉄骨
秘術美術館
避暑図書館
行進公民館
しわくちゃ市役所

思いつく限り列挙してみて使えるだけ使ってみた。
ひょーたくんのお題その五。

今年もなんやかんや色々あったけども、無事に過ぎるみたいなので何より。
年賀状は出した。
後は、大掃除とこたつとみかんと年越し蕎麦。

2009年12月22日火曜日

不協輪音

「不協輪音」

わ、わ、輪。
三重のかごめかごめ、歌いながら一人の周りを回る。くるくる回る。
しかし歌のテンポと回る足取りのリズムと皆の初期位置がわかれば、"うしろのしょうめん"が誰かを当てることは容易いのである。

しょうちゃん、ゆうくん、りかこちゃん!

あれ?

��**

ひょーたくんとこのお題その三。

空中花

「空中花」

空に根を張る花の花畑が風に翻りて空一面に花が咲き天地がひっくり返ったような心地の花畑が空に根を張り風に揺れている。手を伸ばして花弁をついと引っ張ってみれば根までするりと抜けるのでそこいらに適当に植え換えた。

��**

ひょーたくんのお題その四。
矛盾もまたふわふわ感の内になるかどうかとりあえず時間を置いてから判断してみようと思ってこうする也。

2009年12月7日月曜日

謎ワイン

「謎ワイン」

――(無記名)1918年――

 人というものは、扱うものの種類が増えるとそれらを整理し管理するために分類を行う。製造方法、品種、産地、製造年月日に製造者、区別できるものなら何でも区別したがる。そうして分類した挙句ブランドを作ってありがたがったりと、とにかく人というものはせわしない。
 だから謎ワインのようなものが現れる。
 謎ワインは世界中のワインが集まるワインセラーの片隅に身を潜めていた。フランス産、山梨生まれ、そんなワイン達の間にそ知らぬ風に紛れていた。
 しかし人は愚かなので、ラベルに書いてある記述を疑わない。正確には、たとえばフランスや山梨といった名を持つ地が世界のどこかにあると信じてしまう。謎ワインは人のそんな油断につけ込んだ。存在しない土地で人々の知らない方法で醸造され、進化の系譜から忘れ去られた葡萄の親戚で作られた謎ワイン! ラベルに記された情報は嘘ではないけど本当だとは誰にもわからない。
 ただし確かなのは、それはグラスに注ぐと処女の生き血を固めた宝石のように見え、そして美味であることのみである。

��**

というようなものを書いてみたものの、気に入らなかったので没。
あまりにもそのまんますぎる。

今回はお手上げ。

2009年12月5日土曜日

偽物の世界

「偽物の世界」

この世はまさに偽物どもの楽園さ。

一 偽物たるもの存分に個を主張せよ
ニ 偽物たるもの堂々と日の下を歩くべし
三 偽物たるもの己の身分を確らしくする努力を怠るべからず――真実を真実と証明することもまた難しいので諸君らの努力が実を結ぶことは大いにあり得るのだ!
四 されど偽物たるもの本物あってこその価値と知れ
五 偽物たるもの偽物であることそのものを糾弾する者には容赦ない鉄槌を食わせよ
六 偽物たるもの傲慢と謙虚の何たるかを知るべし
七 偽物たるもの常に明日を見るべし

ほらほら今日も扉を開けるヒヨコがいるぞ。ここがホントに楽園か、じっくり試してみてごらん。

��**

インフルにかかってしまったので布団の中でぽちぽちとケータイで書いてみる也。
��00字くらい・推敲(基本的に)ナシ・一発勝負、という縛り(Mなのか)(Mなのだ)。

そんなわけで今日から復活だー(仮)、と勇んでみたはいいもののなんだか世間様は週末でお休みモードに入るらしい。
明日は文フリなるものがあるらしいけど、うん、「へんぐえ」売れるといいよね。


微熱と熱の境目をうだうだしているときに小川洋子『密やかな結晶』を読む。一度目に読んだときに大変えらく気に入って、自分の中のお気に入りベスト10に入っていたのだけども、やっぱりよかった。前回読んだのがもう二年か三年くらい前になるけど、相変わらずうっとりするくらい文章が綺麗だった。うん、良い。
何かを失くしたり、何かを見つけたりする話が個人的嗜好に大変合うらしい。何かを追いかけてどこかへ行ってしまうような話も良い。逆に、スリルやサスペンス、ドタバタ系コメディーのようなものはあまり好きじゃないらしい。広さ、果てしなさ、茫洋としたもの、そういうものが感じられるものはとても、とても、大変、目茶苦茶好き。
そんなものが読みたい! という欲求の下でつい手を出してしまったのが壁井ユカコ『キーリ』。これも既に一回読んでしまったものなので結末はもう知っているけども、そんなことは問題じゃない。もう世界中を旅し尽した、世界の広さを肌で知ってしまった(と思っていた)ハーヴェイが最後の最後で未だ自分が知らない世界に到達するシーンがたまらなく良かった覚えがある。ここでそうくるか、くーっ、と鼻息が荒くなったことはよーくよく憶えている。あの感覚をもう一度。オヌヌメ。

来年咲く花

「来年咲く花」

「来年っていつ?」
真顔で訊かれると私は困ってしまう。一日一日が三六五回来たら、カレンダーを十ニ回捲ったら、四季がぐるっと一周したら。どれも効果的な説明ではない気がする。
「いつ咲くんだろうねー?」
爆発する寸前で踏み止まる蕾。マンション七階のベランダの隅で"来年"を待っている。
――いつか咲くよ。
不意に口を衝いて出た「いつか」に腑に落ちる感覚を覚える。「いつか」がいつかと訊かれたら、来年、と答える他はないけれど、少なくともこの子にとってはより具体的な答えになるだろう。
「いつかかぁー。まだまだ先だねえ」

��**

ひょーたくんとこの10のお題より