2013年6月18日火曜日

青い鳥

 男が青い鳥を見つけたとき、鳥たちは二、三羽集まって人の肉を啄んでいた。青い鳥たちはゲエッ、ゲエッ、と耳障りな声で鳴き、饗宴を楽しんでいるようだった。
 石ころを投げて鳥どもを追い払った。青い鳥たちは高枝にとまり、未練がましく餌を見下ろしていたが、間もなく飛び去っていった。
 それは齢が十にも届かないような少女であった。眼球は既に無く、頬や腹部など柔らかそうな部位が優先的に喰われていた。せめて、鳥たちに弄ばれたのは彼女が息絶えた後であることを願うばかりであった。
 どうか安らかな眠りを――。
 男は少女を仰向けに寝かせ、固くなり始めた手を胸の上で重ねさせる。
 そして祈りの言葉を口にしようとしたそのとき、
「天国に行けないじゃない!」
 少女が無いはずの眼を見開いて叫び、今度こそ息絶えた。