2020年7月18日土曜日

引っ越しのお知らせ(2020/7/19)

長らく愛用してきたseesaaブログから引っ越してきました。

煩わしい広告がなく、かつ安定的に長期間残り続けるであろう場所としてここを選んでみましたが、さてどうなることやらと。
エクスポート/インポート機能を使って引っ越したため、一部文字化けがありますがそこはもうご愛敬ということで。
致命的に読めなくなるほどではないので、放置してあります。仕様です。ご容赦ください。

魚と眠る

 くつくつと冷たい水が湧き出る山頂の湖の底で、銀色うろこの魚たちが眠っている。その中で最も若い稚魚は、ずっと昔に岩になった長老が見る夢を見ていた。
 赤く焼けた荒野に屹立する一本の塔。夕日を浴びて赤錆びた塔が天を貫いている。うら若き人間の乙女である長老は塔の頂を目指す。世界を貫く針の尖端となる。そうして世界を貫き、暗黒の果てに見えたのは満月。何もない湖の底だった。静寂と不変を愛した彼女は孤独に微睡んでいた。永遠にも等しい時間が流れる中で彼女は胸に奥底に眠っていた幼き頃の楽しい思い出に出会う。一つ、二つと記憶を思い出す度に、水底を照らす銀色の月明かりから銀色うろこの魚たちは生まれたのだ。
 そうして最後に生まれたのがお前だったのだよ。
 はっと稚魚は目を覚ます。長老はただの岩になっていた。

川を下る

 とある夫婦が口減らしのために、十になる息子を舟に乗せて川に捨てた。それから七日後、舟と息子は川上から下ってきた。息子は口いっぱいに飯を頬張りながら以下のように語った。
 両親の姿が見えなくなって以来、右手に山稜、左手に田畑が広がる景色が続いた。寝ても醒めても景色は変わらない。持たせてもらった水と団子も尽き、空腹に耐えかねて川に飛び込もうとしたが、縁に足を掛けたところで不思議とその気が失せた。涙は枯れ果て日を数えるのも諦めた頃、母が自分を見つけてくれて、今に至った。だからこれは死ぬ間際に見ている夢なのだ、どうか醒めないでくれ、と。
 以来息子は他の兄弟の五倍は働き、おかげで家は多少裕福になった。年月は流れ、夫婦が老いて亡くなり、兄弟たちやその子孫たちも亡くなった後も、息子は一睡もすることなく朝から晩まで働き続けている。