2020年8月11日火曜日

水色の散歩道

 水色に混ぜ合わせた絵の具を指に乗せ、キャンバスの右上から左下に向けて一直線に走らせた。天に昇るほうき星のような一本の線。
 少し時間が経って乾くと、キャンバスの四隅から豆粒大の建築会社の社員が市の土木課職員や一級建築士を伴ってやって来て、粉粒のような図面を開き、打ち合わせを始めた。その後重機がやって来て、水色の線に沿って広葉樹を植え、アスファルトを敷き、家やビルを建て、あっという間に住宅街を作ってしまった。何台かのトラックが往来し、一軒一軒に住人が引っ越してきて、豆粒大の住人達が暮らしを営み始める。子供が生まれると街はさらに賑やかになった。諍いも生まれる。いくつかの悲しい事件があった後、「街のシンボルである散歩道だが、水色というのは景観に合わないのではないか」という意見が提示され、喧々諤々の議論がなされる。しかし結論は出ない。疲れ果てた市民たちは空を見上げ、呼びかけた。
 神様はどうお考えですかー?
 え、急に話を振られても困る……。