2005年10月5日水曜日

月面炎上

 椅子に座って星を見上げていると、椅子がずぶずぶと沈み始めて星がどんどん遠のいていく。
 マントルの流れに乗っていくと、プレートとプレートの喧嘩に出くわした。事情は知らないがとにかくうるさかったので、私はヨッと体を伸ばして指で近いほうのプレートを弾いておく。マントルの流れが激しくなる。
 上向きの流れに乗っていると、巻き込まれた石ころたちが「こりゃあいかん」と一斉に身を寄せ合い始めた。せっかくなので私もご一緒させてもらう。「お前さんはどこから来なさった?」「ここからは少し遠いところの地上からですよ」「そうか。昔な、わしらの仲間にも遠いところに行ってしまった奴がおるんだがな、だが今度はわしらが行く番だ」
 石ころたちが悲鳴を上げて溶けていくうちに、いつの間にか地表に出ていたらしい。マグマの飛沫の合間から淡い黄色の地表が見えた。私は故郷に別れを告げると、椅子に座り直して蒼い星を見据える。
 よし、この椅子を売りに行こう。


 発掘した。せっかくなので晒してみる。某氏が読んだらきっと「頓珍漢一歩手前」と仰られることでせう。言われすぎて慣れたね、うん。哀しいね。

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