2006年3月18日土曜日

プラスティックロマンス+α

 僕は真っ白な砂漠を歩いていた。ある場所までずっと歩いてきていた。蒼い月が天球を半周してようやく白い月がまた昇ろうとしたとき、僕はそこに着き、彼女が立ち上がった。
 僕らはしばらく向かい合っていた。不意に、彼女の足元から潮水が泡を立てて湧き出す。潮水に浸った爪先が、少し青い。空色だ。
 湧き出した潮水が空に滴り落ちる。最初の一滴。彼女は空を見上げる。やがて潮水は彼女の足から頭まで伝って、髪の毛の先から断続的に滴り落ち始める。
 空に落ちた滴は空を叩いた。波紋が広がる。無数の星が揺らぐ、歪む。
 僕は眩暈がして目を瞑った。次に目を開けたときにはもう、彼女はいない。
 いつしか僕の足元も砂漠の遥か遠くの地平線も全て潮水で満たされていた。鮮やかな青色の空に立ち、遥か頭上の真っ白な砂漠を一人歩く彼女を俯瞰する。


 500文字の心臓、第57回タイトル競作『プラスティックロマンス』に出したものの加筆修正版。最後の矛盾した書き方がミソとか言ってみたり。
 競作の方では○1つと△2つをいただきました。どもども。ごちそうさまでふ。
 選評を見ていると「どこがプラスティックなのかわかんなーい」ということでしたが、さぁどうでしょうねぇ。空がぐにゃーってなるところがソレっぽいのか、な? なかなかタイトルに即したものが書けずにいます。
 プラスティックというものに、透明で柔らかいもの、というイメージを見てた所為かもです。よく考えたら透明じゃなくて硬いプラスティックがたくさんあるんですよねー。そういう意味では今回の正選作品とは真逆の解釈をしていたのかもしれません。まぁ、別によいのだけども。

 ところで第56回がないのはどういうことなのでしょうか。ずっと言おうか言うまいか迷ってたりする。

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