「空気より軽い氷の舟、鉄より重い泡の錨」
空のずーっと高いところに空気より軽い水が浮かんでて、私のおじいさんはプロペラ機に瓶を積んでそれを集めに行ったの。無味無臭で無色のそれは蛇口を捻れば出てくる水と同じように見えたけれど、空気よりずっと軽いから肉厚のガラス瓶程度ではすぐにぷわぷわ浮かんでしまうのよ。
海のずーっと深いところに海水より重い泡が沈んでて、わたしのおかあさんは潜水艦に瓶を積んでそれを集めに行ったの。無味無臭で無色のそれは普段吸っている空気と同じように見えたけれど、鉄よりずっと重いから肉厚のガラス瓶程度ではすぐに内圧で割れてしまうのよ。
時は満ちた。
晴れやかなパレードに見送られて空気より軽い氷の舟はぐんぐん空の高い方へ登っていく。七色の風船群は遥か眼下に。
普通の氷は水より軽くて空気より重いので、ちょうど二つの境目で浮くけれど、この氷の舟は空気より軽いので、空気の海の水面まで浮かべるはずなのだ。人類初の宇宙船だ。きらきらと氷の粉の尾を引いて、時速1700キロメートルでのんびり巡回する。
��けれど氷の舟が溶けてしまったら、あなたは地に落ちてしまう。そうなる前に、錨を下ろしなさい。私たちがあなたをこちらに引き戻してあげるから)
甲板に溜った水を両手で掬って口に含むと、さっきよりぐっと体が軽くなった気がする。
まだまだ終わらない。終わらせない。もったいないから。
小指の先で泡の錨をもてあそぶ。その端を中指に巻き付けておこうか迷ってる。おしっこをして余分な水を抜いたらまた一段と体が軽くなった気がする。
月が近づく。まだまだ終わらせやしない。
��**
むふふのふ。ふふふのむ。
じゃー、25で! 二番目の候補は18だったけれど、25で。
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