「天空サーカス」
引力が斥力に変わったとき彼らは母なる星を追いやられ、以来流浪の民となる。
「上も下もなくてね」
「ぴょんぴょん跳ね回ったってみんな欠伸しちゃう」
「困っちゃったね」
球状のドームの全方位に客はいた。無重力の世界でジャグリングや火の輪くぐりをやっても、客は退屈そうにため息をつくのだった。
彼らは途方に暮れた。かつてのやり方はもはや通用しなかった。
“かつてのやり方”
彼らは顔を見合わせる。
以下はプログラムを一新してから最初の公演記録である。13歳のシャーリは舞台の袖で、爪先に神経を集中させていた。
��暗闇)
かつて我々は一つの星で暮らしておりました。生まれた時から重力が私たちを縛り、我々にとって空とは見上げるものでした。不幸でしょうか? いいえ、決して。
��照明)
シャーリが11歳になった最初の朝、彼女の枕元には真っ赤な靴がありました。彼女はプレゼントを履き、早速家の外に飛び出しました。靴は足によく馴染み、足を繰る度に芝が柔らかく彼女の体を押し返すのです。そうして緑の丘を駆け登り、海の見える高台で仰向けます。火照った体を潮風が冷やし、眼前には空が迫っていました。
重力。
赤い靴はとてもすばらしいプレゼントでした。
��**
タイトル競作「天空サーカス」 ○:1、△:1、×:2
無重力でジャグリングなんて難しいだろうになあ。
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