『K』
Kは誰よりも勇敢で賢く優しくて、僕の親友だ。Kは僕の想像だったが、全然問題じゃなかった。僕たちはあらゆる場所に、望みさえすればいつでも行けた。砂漠を渡るキャラバンにもなれた。嵐に立ち向かう船団にもなれた。ジャングルの王者にだってなれた。
ある日、Kは僕に小さな鍵を見せてくれた。金色の、ぴかぴかと光る鍵だった。僕はそれが怖ろしくて、「捨ててよ!」と怒鳴った。Kは淋しそうな顔をして鍵をポケットに入れる。「捨てて!」しかしKは捨ててくれない。僕が掴みかかると、Kは逃げてしまう。すると僕は是が非でもその鍵を捨てなければいけない気がして、Kを追いかけ始めたのだった。
いくつもドアを蹴破って押し進む中には、砂漠も甲板も熱帯雨林もあった。僕はKに追いつけない。それどころか、時折Kは立ち止まって、僕が考えを改めるのを待っている。しかし僕にはその気がないので、結局また逃げていくのだった。
そんな鬼ごっこが続いた末に、僕はとうとう崖の端までKを追い詰めた。Kの迫り寄る僕を見る目はとても悲しげで、やっぱりKは僕の親友なのだった。振り返ればもう何もないことぐらい、知っている。それでもやっぱり、僕は嫌なのだ。
��**
タイトル競作「K」参加。○:1(2)、△:2
予想外の大健闘。
元ネタというかその後の話は、プロフィール欄のWeb拍手ボタンの下の、四角が市松模様になっている部分の、上から二段目。
別に隠す気はなかったけど隠しページっぽくなっている部分。別に隠す気はないのでこうやって場所を告白しているのであった。
ちなみにこのお話は手書きの原稿で書いていたもので、実を言えばそちらは完結していたりする。
しかし持ち前の怠惰な性分故に、テキストデータ化が滞っているのだった。
トータルで7万字程度。誰か代行してくれないかしらん。
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