2006年4月22日土曜日

浮揚

 意識を取り戻した私は痛む頭を押さえながら顔を上げる。瓦礫の合間から光が射し込んでいた。手で緩く掻いただけで消えてしまいそうな光だ。
 埃や塵が宙を舞う。それらは光の境界の辺りで不意に姿を表し、すぐに光に消えてゆく。その境界を見定めようとして、私は凝視する。
 私の体は透き通るように白い。暗闇の中でも、微かな光を帯びて視覚的に存在するのだ。しかし、無数の有機物で構成される私は、左足の爪先から綻び始める。絹糸のように細く薄い一本の糸になる。かつて私を満たしていた空虚を私の形のままそこに残し、私はふらふらと彷徨いやがて光に溶ける。





 自由題に出そうと思っていたけど、いつの間にか忘れ去られていたもの。思い出したついでに、表に出さねば。

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