2006年4月24日月曜日

REVELATION IN ARCADIA(啓示、アルカディアにて)

 私の拍手を合図にショーは始まる。
 草原の真ん中に作られた小さな劇場はとても質素。少し盛り上がった土の上に板を置いただけ。その上で、彼はぺこりとありったけの心を込めてお辞儀をする。すると、つつつ、って空から真っ白な細い糸が降りてきて、彼の頭と両手足にぴたりと吸い付く。糸が吸い付く瞬間が私は大好き。私もいつかあんな風に、と思う。
 彼がくるくると素敵なダンスを踊ると、彼の手の振りやステップが白い軌跡を描く。クレヨンで描いたような、子供っぽい白色だ。その軌跡が幾重にも渦巻いて彼を包んで、彼はやがて大きな繭になる。
 すると雲より高いところから垂れていた糸が一本に縒られて、繭は少しずつ解かれていく。そして全部解かれると、彼は無数の蝶になって四方八方に飛んでいく。黄色くて小さな、可愛らしい蝶。
 わああ、わああ。
 いつの間にか劇場の周りにはたくさんの観客がいて、それぞれが歓声を上げる。無数の蝶は歓声や指笛の音に乗って、見えなくなるくらい遠くまで飛んでいく。
 そして、蝶の軌跡は全部淡いブルーだけどその中に一つだけ紅いのがあるから、私はそれを追ってどこまでも歩いていく。




 水池君主催の『つながる超短編』(回廊第七号収録)に参加したもの。先日のオフでははやかつさんが「繋ぎにくいものを書いてゴメン」みたいなことを仰っていましたが、とんでもないです。むしろ僕こそマンジュさんに謝らなければ。コレからどういう連想ができるのかしららららら。いやもう、キラーパスを見事にキャッチしてくれてありがとうございます。
 で、終わってから思うのは、もっと冒険してもよかったかな、ということでした。
 

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