2006年12月14日木曜日

9 マッチ箱の店

 マッチ箱の蓋をそうっと開いてみると、冷たく澱んだ霧が零れてきた。朽ち果てた切り株には少女が腰掛けている。真っ赤なケープが不釣合いだった。
 不意に少女がこちらを振り返り、たちまち白骨と化す。肉が削げ落ちていく様までも鮮やかに。
「商品に触るなよ」
 男が素早くマッチ箱を取り上げる。唖然とする少年を尻目に店主はマッチ箱からマッチを出し、煙草に火をつける。白い煙となった少女が狭い部屋いっぱいに充満し、少年の肺を遠慮なく支配する。





 発掘。お題9~
 だいぶ昔に書いたものを永らく放置していましたよ。基本的に手書きなもので。目でコピペするのは面倒なのです。


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