2007年4月29日日曜日

輝ける太陽の子

「輝ける太陽の子」

 腐れる母様の朽ちた胎からは今尚子が生まれ続け、その多くは外気を吸う前に果ててしまいます。すっかり母様の目から色が失せた頃にわたくしは生まれ、兄様や姉様に抱かれ弟や妹の骸を食み育ちました。皆は外の世界を忌避しており、母様に至ってはかつてそこに居たこともあってか思い出すだけで泣き崩れてしまわれます。しかしあるときわたくしがぴちゃぴちゃと水遊びをしておりますと、目の無い弟が窓を開けてしまいわたくしは慌ててそれを閉めるのですが、その間際に見た朝焼けはなんとも言い難く美しいものでした。今でも家の窓には私の付けた黒い手跡が残っていることでしょう。以来わたくしは秘かに外界に想いを馳せるようになりあるときとうとう飛び出すことを決め実行しました。わたくしを慕っていた弟や妹も連れると彼らは直ぐに亡くなりましたが、どういうわけかわたくしだけが生き残りました。構いません。わたくしは間もなく太陽がいつも同じ道を歩むことを知り後を追うことを覚えます。わたくしには足がないので、ぺちゃ、ぺちゃ、と這い爪を大地に差して進むのですが、一日に一度の朝焼けと夕焼けの間だけは留まりました。ちっぽけなわたくしは彼の前ではただひれ伏すしかないのです。窪んだ眼窩に光を溢れる程に浴びて黒くただれた指で虚を這わせれば、彼方に父様の御姿が見える気がするのです。




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