2008年2月26日火曜日

見知らぬ隣人

「見知らぬ隣人」

 真夜中、眩い光を放ちながらUFOがやってくる。UFOはアパート前で彼を下ろし去っていく。彼が帰宅したのだ。
 築何十年のボロアパートだから、階段や廊下を歩く音がよく響く。かつんつん、かつんつん、と不思議な足音を立てて彼は僕の部屋の前を横切り、34.5号室に入っていく。バタンと音がしたきり静まり返る。
 それから僕は壁をこんここんと三度叩く。同じくこんここんと返ってくる。窓を開けてみると35号室の男も顔を出しており、さっぱりわかんねえなあ、わかんないですねえ34.5号室。手を伸ばせば互いの手が触れる距離だけど、その間には異次元の34.5号室があって、そこで宇宙人の彼は背広を脱ぎシャツにパンツという居出たちでビール片手に柿の種を齧りスポーツニュースを見ているのだろう。試合の結果に一喜一憂しながら。もっとも35号室の男は、毎晩女の子を取っ換え引っ換えでよろしくやってんだろうよ、と下卑た笑いをする。異次元なら音漏れもへったくれもねえからなあ。
 35号室の男とはかれこれもう五年の付き合いだけど、未だにそういうところは気に入らない。

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