2008年2月26日火曜日

絵の中の風景

「絵の中の風景」

 彼女の書く絵は牢獄だ。筆に罪を乗せてキャンバスに塗りたくって牢獄に閉じ込めるのだ。
 あれを見てみるといい。あの小丘の街の住人は未来を放棄し過去の栄光に安住することを選んだ者たちだ。彼女によって牢獄に閉じ込められたことにすら気付かないくらい腐った奴らだよ。
 これはどうだろう。無邪気を装い罪無き小さな者らを殺めた少女だ。少女の後ろにある黒山は今まで彼女が殺してきた蟻の屍だよ、可哀想に土にも還れないのだ。
 なに? 彼女に会わせろ、と。
 ああそうだったね。君は絵の買い付けに来たのだものね。ああ、彼女はこっちだ。今は作業中だから、場合によっては待ってもらうことになるが構わないか? そうか、それは助かる。……運がよかったね、入っていいってさ。ああそうそう、彼女に直接話しかけることは遠慮してくれたまえ。話は全て私が介するからね。
 ――ああフラン、いいか落ち着くんだ。奴らは、絶対に、中から出てきたりしないし、ましてや君を引きずり込んだりしない。君はもう奴らとは違うんだ、君が全ての絵を描き切ったら君は完全に自由になれるんだ。記憶も原罪でさえも君を縛ることなんてできなくなるんだ。鳥になる。いつか話してくれたろう。え? なに構うことはないさ、僕を忘れてしまうことは怖れなくていいんだよ。
 待たせたね。いくらで買ってくれるんだい? 言い値で構わないってさ

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