2008年6月6日金曜日

交信

「交信」

 空の高いところから赤い糸が垂れてきて、私の目の前でふらふらと揺れだした。運命の赤い糸かしらん、なんて考えながら引っ張ってみると間もなく糸の先から反応がある。
 く、くいくい、くくくい(お返事ありがとう)
 くいくくい、くくーっい(どういたしまして)
 くくいくくっくい、くーくいくい(今度星を見に行きませんか?)
 さすがにこれは唐突だろう。どうお断り申し上げようか考えていると、
��やっぱり突然過ぎましたよね、びっくりさせてごめんなさい。でも今の時期、スピカから見たアークトゥルスの辺りに流星群が来ててとても綺麗なんです)
 彼の不安が糸を通じてこちらまで伝わってきて何だか可愛く思えてきてしまった。どんな姿かたちをしているのか知らないけれど、糸を片手にはあと溜息をつく背中の淋しさに種族の壁はない。
��素敵ですね、よろしければご一緒させてください)
��本当ですか! 嬉しいなあ)
 それからしばらく、くいくい、くくいくい、と交信を行い三日後に裏山で待ち合わせをする。





 コトリの宮殿第-2回自由題、あともう少しで掲載。
 僕自身はささやかなものが好きなのだけども、読み手側としては思い切りが足りないのだという。この辺りのすり合わせが今後の課題なのかなー、とかぼんやり。単体で見るから味気ないのだろうし、似たようなものを複数並べてみればまた違って見えるんじゃないかと。そんな風に思った。

 あと一点だけ。
 長身痩躯で知的で黒縁眼鏡をかけてて落ち着いたトーンの声をしていらっしゃるんだろうなと勝手に妄想していたのに、実際に声を聞いてみれば結構な乙女ボイスでつい動揺してしまって「野郎」と呼んじゃったわけじゃないのよ、べべべべ別に。

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