「黒い羊」
もこもこひつじ くろひつじ
ぽーんとさくを とびこえる
朝、目が醒めると枕元にこんな紙切れがあった。
私たちの黒い羊を巡る旅が始まる。
交番で私たち黒い羊を探してるのと言うと、動物は落し物と呼ばないよと言われた。大人はモノがわかってないと私たちは憤慨し合う。
やはり、大人なんかに、頼っては、いけなかったのだ。
目配せし合い頷くと、私たちはポーチにレモンキャンディを入れて西へ行く。野良猫や烏に道を尋ね、鯨の背を借りて海を越え、鷲の翼で山を越え、ずっと白い空の遠くへ行く。日が暮れ夕方になると冷たい風が頬を撫で始める。私たちは茜色に染まったひつじ雲の背に飛び乗った。ひつじ雲が鳴く。もこもこに寝転がっているとだんだん空の色が濃くなる。やがて星空の海に変わりおおぐまとこぐまが姿を表した。金銀砂子を散らした川は空のずっとずっと遠くまで流れ行く。
私たちどこまで行くのかしら。どこでもないところへ行くのよ。なら正義の国だったら良いな。
くすくす笑い合う。
もうすぐだね。もうすぐ。もうすぐ! そう、もうすぐ!
うつ伏せになって前を向いてみると、彼方にきらきら光る虹色の柵が見える。私たちはきゃっきゃと喜び合う。
タイトル競作 △:2 ×:1
お粗末さまでした。
今回の反省点
・ディテールの適当っぷり
・選評のヌルさ
・砂場作見抜けず
・空虹作(ry
・むしろ作者がわからん
この頃絶不調なのは自覚していたけども、それを差し引いてもひどいひどい。一度原点に帰ったほうがよさげですはい。
以下、解題兼言い訳。
発表時に全作にざーっと目を通してみて思ったのが、添田作(17)と拙作はまったく正反対なのだなあ、ということ。添田作は結局元の世界(白い羊たちのところ)に戻ってきたけど、拙作は何の躊躇いもなくあっちの世界(柵の向こう側)に行ってしまった。この違いは各筆者の頭の中身や価値観に起因するものだろう。自分がいかに悪趣味というか未練がないというかろくでなしというかなんというか、やれやれなんだぜ。
今回のお話は復讐譚。イメージの元は江國香織「なつのひかり」に出てくる意地悪な双子より。持つニュアンスは元とは違うけども、話の大筋は以下の通り。自分が厄介者であると自覚のある二人が自分の世界を構築して“大人”の現実から完全に逃避する。自分以外のすべてに対する復讐。復讐というよりは呪詛に近いかも。自分で自分を生贄にして、“正義の国”から悪である全世界に呪いをかける。そんな話。やっぱりろくでもない。そういう意味で言うと、冒頭の紙切れは破滅のスイッチみたいなもの。これによって外の可能性を知ってしまったわけだから。やっぱり(ry
いつぞやかのひつじ雲といい、救いのない話が多いのはなぜなんだか。やっ(ry
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