2012年2月20日月曜日

『煙』

 我が指導教官の紹介で、会議の受付事務を手伝うことになった。
 当日は見事な冬晴れの日であった。午後零時半、開場する。路地裏のおんぼろビルの三階でどんな会議をやるのかしらん、と思案する。ppt資料のタイトルは『第二回もくもく大会』とあるから、愛煙家の集いか。首を傾げていると階下から甘い香りの煙が立ち上り、間もなく我が指導教官が現れた。大きな煙管を片手に煙をくゆらせる。火災警報装置、はついてないらしい。「励みたまえよ」と我が指導教官は記帳し会場内へ入っていく。それから続々と煙を吹かす老若男女がやってきた。
 午後一時、会議が始まる。暇になる。しかし観音開きの鉄扉の向こうは喧々諤々の様相のようだった。午後二時、休憩。扉が開くと大量の白煙と共に汗だくの参加者達が一斉に飛び出した。
 そして午後三時を過ぎた頃、拍手が鳴り響く。扉が開く。視界を奪われるほどの煙、煙、煙。思わず咳込み、腰を屈めつつ換気扇を手探りでつける。
「曲者じゃあ!」
 ぎゃあぎゃあ、わあわあ、阿鼻叫喚である。
 しかし次第に声は静まっていき、そろそろと目を開けるとそこには誰もいない。
 頭を落ち着かせる。
 ええと、とりあえず、あれだ。
 バイト代だけは欲しい。

***

 タイトル競作に出さなかったもの。今朝書いたのだから、いわゆる〆切に間に合わずというものです。
 しかしこれは詰め込み過ぎ。

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