渡り鳥たちは北へ北へと飛んでいき、ついに最果てにある島に辿り着く。
そこは波も風も届かない場所だった。
同胞たちの狂ったような鳴き声ばかりが発せられ、しかし鳴いたそばから静寂に上書きされてしまう。
私も必死に喉を震わせていた。そうしないと自分の存在を確かめられなくて、気が気でなくなってしまうと恐れていたからだ。
渡り鳥たちは目指していた北極に到達できたが、飛ぶことを止められないので、島の中央を軸として旋回し続けていた。
空中で同胞と衝突したり力尽きたりした者が堕ちて島の一部となる。
ここでは時の流れも一様ではない。
明滅を繰り返す灰色の空の下、絶えず旋回する無数の黒い影は、排水溝で渦巻く水や街灯に群がる虫のように見えた。誰の記憶だったか。
やがて明けない夜が訪れ、渡り鳥たちは己の姿をも失う。
凍てついた星空の中に一つ、島の真上にひときわ強く輝く青白い星があった。
渡り鳥たちはその冷酷な青に魅せられる。あれこそが、あれこそが、自分たちの目指していたものだったのだ。
残り少ない体力を振り絞り、垂直方向への飛翔を試みる。
しかし飛べども飛べどもついに重力の鎖を断ち切ることはできなかった。
同胞も私も、遠退く光を意識が途切れる最後の瞬間まで睨みつけ、魂に転写しようと試みていた。
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