2012年2月13日月曜日

【ひかり町ガイドブック】光板製造工場/革命前夜

【学ぶ】
『光板製造工場』
 ひかり町の一角には光板(こうはん)と呼ばれる素材を作る工場があります。光は一兆分の一に圧縮すると固体に似た性質を持つようになるのです。そうして圧縮したものを光板と呼びます。光板は常に光を帯びており、その強さや色は圧縮の際に混ぜるレアメタルの種類と量で調整可能です。光板をふんだんに使った家を建てることが、ひかり町での長者の証でした。


「ものがたり」
『革命前夜』
 K博士の研究はいよいよ総仕上げを迎えていた。研究が完成すれば、光板の量産体制を確立することができる。
 三日三晩、K博士は実験を繰り返す。その様子を陰で見守るのはT女史である。不意に、女史のイヤホンに部下からの報告が入る。女史はマイクに素早く指示を出した。

 博士の研究を快く思わない者は少なくない。光板が量産可能になれば相対的にその価値が損なわれるためだ。
 闇社会は強大である。
 K博士の命を狙う者がいる。研究設備を破壊せんとする者がいる。あるいは、政治的手段で博士の研究資金の凍結を図る者もいる。何百、何千という悪意がK博士を取り囲んでいた。

 ――圧縮機の重低音が止む。
 博士は取っ手を握り、分厚い鉛の蓋をゆっくり開く――それを待ちきれない生まれたての光が、溢れ、溢れ、溢れる。
 博士は光の詰まった圧縮機の中にピンセットを沈めていく。

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 2012年1月16日に行われた超短編イベント「西崎憲さんと語る「可能性の文学」の歩き方」の中の一企画に寄稿。詳細はこちら

 建築材はその都市を雰囲気を決定する最たるものだと思うので攻めてみたのだった。

2012年1月29日日曜日

朝霧の中で/NOIFproject



K

『K』

 Kは誰よりも勇敢で賢く優しくて、僕の親友だ。Kは僕の想像だったが、全然問題じゃなかった。僕たちはあらゆる場所に、望みさえすればいつでも行けた。砂漠を渡るキャラバンにもなれた。嵐に立ち向かう船団にもなれた。ジャングルの王者にだってなれた。
 ある日、Kは僕に小さな鍵を見せてくれた。金色の、ぴかぴかと光る鍵だった。僕はそれが怖ろしくて、「捨ててよ!」と怒鳴った。Kは淋しそうな顔をして鍵をポケットに入れる。「捨てて!」しかしKは捨ててくれない。僕が掴みかかると、Kは逃げてしまう。すると僕は是が非でもその鍵を捨てなければいけない気がして、Kを追いかけ始めたのだった。
 いくつもドアを蹴破って押し進む中には、砂漠も甲板も熱帯雨林もあった。僕はKに追いつけない。それどころか、時折Kは立ち止まって、僕が考えを改めるのを待っている。しかし僕にはその気がないので、結局また逃げていくのだった。
 そんな鬼ごっこが続いた末に、僕はとうとう崖の端までKを追い詰めた。Kの迫り寄る僕を見る目はとても悲しげで、やっぱりKは僕の親友なのだった。振り返ればもう何もないことぐらい、知っている。それでもやっぱり、僕は嫌なのだ。

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 タイトル競作「K」参加。○:1(2)、△:2
 予想外の大健闘。
 元ネタというかその後の話は、プロフィール欄のWeb拍手ボタンの下の、四角が市松模様になっている部分の、上から二段目。
 別に隠す気はなかったけど隠しページっぽくなっている部分。別に隠す気はないのでこうやって場所を告白しているのであった。


 ちなみにこのお話は手書きの原稿で書いていたもので、実を言えばそちらは完結していたりする。
 しかし持ち前の怠惰な性分故に、テキストデータ化が滞っているのだった。
 トータルで7万字程度。誰か代行してくれないかしらん。

2011年11月16日水曜日

ゴロワーズの少年/NOIFproject



ぐしゃ

「ぐしゃ」

 それは初めて聞いた音楽。
 目を逸らすと、「がらくたの分際で人間みたいなふりをするな」と殴られた。

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 タイトル競作 ○:1

 これを書く前くらいに、山本弘「アイの物語」を読んでいたのでそれに大いに影響されたところがあるのだと思います。はい。
 はやかつさんにピンポイントで届いたので、個人的には大勝利。

 メイキングはいずれどこかの段階でやる気と余力があれば。