2007年5月5日土曜日

這い回る蝶々

「這い回る蝶々」

 永久に眠れる女郎たちの肩に彫られた蝶々が好い人を求めて皮膚を羽ばたいている。


 タイトル競作 ×:1

 選評を見ていて思ったこと。這い回るってそんなアグレッシブなイメージがあったのかしらん、とか思ったり。僕はむしろ空とか上の方と途方も無い距離があるようなイメージだったりする。
 ところで虚数昆虫、いいよね。もうね……むふ…………ぞなもし……はぐ……ぎゅっ……みたいな、やあん……たまらんのよ…………こう、もう。←みたいな感じ(気持ち悪い)。惚れ込みすぎて他作品が読めませんでした。てへ。



 ヒダリマキさんが翅を毟った蝶をミギマキさんは膝を抱えて見ている。ヒダリマキさんは、毟った翅を陽に透かしてみたり水に浸してみたり、或いは宙に放ったかと思えば絹でも触れるかのように親指と人差し指で摘み、ふー、と息を吹きかけきゃっきゃと手を叩いて喜び、挙句翅をぐしゃぐしゃにしてしまう。手の平にこびりついた残骸をはたき落とし、ヒダリマキさんはどこかへ行ってしまう。その間ミギマキさんはずっと観察を続けていた。蝶には決して触れずただ視線だけを注ぐ。が、やがて立ち上がり、踵でぐりぐりと蝶を擂り潰すと、ヒダリマキさんを追って駆けていった。そしてミギマキさんは、花畑の真ん中で蝶を捕まえようと跳ね回るヒダリマキさんを押し倒し左肩に齧り付く。二人はくねくねと体勢を変えながらきゃっきゃと笑い合う。

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