2007年6月30日土曜日

G線上のアリア

「G線上のアリア」

 荒風が広大な砂漠に作る波紋は五線よりも遥かに多い無限の線譜となって現れる。畝のように。CからBの七色の音階の合間を、ずっと僕と砂鯨は風と同じ速度で航行していた。
 しかしある日砂鯨は死んでしまった。彼自身気付かぬ間に毒虫に噛まれ、そしてあっけなく死んでしまったのだ。
 三日後、北の方から白服の一団が砂舟に乗ってやってきた。一団は砂鯨の巨大な身体を骨と肉と皮とその他に分解する。
 彼らは皮と骨でドラムとティンパニを作った。髭のハープに背骨のたて笛、これら砂鯨の楽器を伴奏に白服の少女がアリアを唄う、無数の星空の下。星々の一つ一つを地表の無限線譜に射影して一夜限りのスコアが出現する。地の果てまで砂漠中全てを埋め尽くす、星の数と同数の音符を彼らはなぞるのだ。その狭間で僕は膝を抱え少女のアリアに耳を傾ける。
 夜が明けると僕は砂鯨の耳骨以外の全てを一団に譲った。
「街まで送るわ」少女は言った。
 僕は舟べりで砂面を撫でる。耳骨に耳を当てれば昨夜のアリアが蘇る。




 G線上のアリア~。由来を調べてみるに、G線だけで弾けるからG線上のアリアなんだと。へぇ。
��タイトルとまるでお門違いだけども、書いてしまったものはしゃーないのです。これと別の話はかけませぬ。)

 次は「遺書と嘘」


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