2007年10月15日月曜日

プロフェッショナル

「プロフェッショナル」

 私はプロだ、と言うので、何のプロなのかと訊ねてみたら、内緒だと黙して答えない。しかしこの国では何かに特化した能力を持つ者は何者であれ礼節を持って待遇するのが決まりなので、仕方なく言うとおり泊めることにした。もしこの自称プロの言うことが嘘――つまり凡人――だった場合には詐欺で告発することも見据えて。
 料理をやらせたら指を切った。
 大学のレポートをやらせてみてもてんで的外れのことしか書かない。字も汚い。
 掃除をやらせれば花瓶を割り、留守中の犬の世話を任せても逆に伏せられる始末。
 一緒にゲームをしてもこてんぱんにやられてべそをかく。
 じゃあ一体何ならできるのか、と問い詰めようとしても安らかな寝顔を見ると、この頃は、まあいいか、とも思えてくるようになった。
 恋人と喧嘩をした。原因は何だったか忘れたがひどく腹立たしかったことだけは確かで、しばらくふらふらしてから帰ったのが夜更け過ぎだった。腹いせにゲームでいじめてやろうと思って自称プロを呼んだがどこにもいない。不安や心配よりも腹立たしさが先立つ。結局その日はそのまま寝たがプロはそれから何日も帰ってこなかった。もういなくなったかと思った。それはそれでいいとも思った。元々が元々なのだから。
 一人で料理をしてレポートを書き、犬と遊ぶ。恋人とはすっかり仲直りをして以前の日々に戻っていた。
 そんなある日、自称プロがひょっこり戻ってきた。ぽかんとする私に、「私はプロだ」堂々と宣言する。何のプロなのかと訊ねてみたら、内緒だと黙して答えない。しかしこの国では何かに特化した能力を持つ者は何者であれ礼節を持って待遇するのが決まりなので、仕方なく言うとおり泊めることにした。凡才以下であることは知っていたが、この国ではそのような人にも人権は認められているのだ。それに最初に比べて料理も掃除も犬の世話も、多少は上手くなっていたし、不都合はない。





 って言ってみたかったw

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