「タイムカプセル」
タイムカプセルを籠に盛り、ブン、と空に向かって力いっぱい投げつける。太陽と重なり合って一瞬だけ蒸発した後にばらばらとタイムカプセルが落ちてくるが、中には落ちずに消えてしまうものもある。それこそが本物のタイムカプセルだ。どの未来に落ちるか定かではないけれど。
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こつん、と頭に何かが当たって地面に落ちた。真鍮で出来た野球のボールみたいなそれは一見すると金属であるが持ってみると驚くほど軽い。どこから降ってきたのか見上げてみるが、空は夏の色。と、遠くからセスナの唸り声。後でタイムカプセルと知るそれを右手に今はただぼうと空を見ている。
妹が「大学は楽しくなさそう」と言うので理由を聞いてみたら、「あんた(オイラ)が楽しくなさそうだから」だそうな。取り澄ました様子がそう見えるらしい。自覚はないけれど。
楽しいか楽しくないかで言えば楽しいけれど、巷の大学生みたいにわーっと騒ぐ楽しみ方はしないだけなのだよ。御隠居みたいな余生。
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