三つ葉のなだれ
2008年3月14日金曜日
鉄格子のはまった窓
「鉄格子のはまった窓」
鉄格子の不揃いに切り取られた鉄棒が鉄琴に似ていることに気付いたのは、空を自由自在に飛ぶ夢を見た日の朝だった。
石室の密やかに息づく床に素足で立つ。ほんの少し背を伸ばして窓の鉄格子を爪で弾くと、キン、と鈍い金属音がした。隣の鉄棒はさっき弾いたものより少し短く、同じく鳴らしてみると甲高い音がした。B♭だった。
私は歌を歌える。
背筋が凍えるような、それは確かで静かな興奮だった。潰れた声帯を私だけの楽器に再生させ、日なが一日私は私の歌を無人島の空一杯に響き渡らせる。
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