2008年8月15日金曜日

擬態

「擬態」

 景色だと思っていたものは、実は全て擬態した虫だった。
 女が笛を吹いて魔法を解く。四方を囲んでいた硝子のビル群はたちまち白い蝶に解けて空に散り行き、道行く人も頭から蟻の群となり崩れ行く。女はなおも笛を吹き、魔法を解き続ける。一体どこまでが魔法なのだろう。あらゆる擬態が暴かれたにも関わらず、侵食は止まらない。すっかりまったいらになった地平の、半球状の空が天頂から解れていく。空のあの青はシジミ蝶の青だったのか、と感心する傍から覗いた穴には無数の星が瞬く。それが蛍であると気付くのに時間は要らなかったのだけれど。
 地面も消え失せた。女は面を上げ、僕に選択を強いる。
「最後の魔法を、解きますか、解きませんか」
 はい、と頷く僕に迷いはない。





 過去の日記を大量整理。具体的な変更点は以下の通り。

・書き物のフォーマット統一
・便乗して若気の至りをなかったことにする

 以上。

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