2008年8月6日水曜日

スピカ

「スピカ」

 麦の穂を手にした女神が天頂に穂を挿し祈る。地上からは逆さに挿さって見えているが、爆発的に広がる麦穂はたちまち四方の空の境界まで迫り、黄金の海に変貌させる。
 たわわに実った麦の穂が風を受けて頭を垂れると、西から東、北から南、光の波が走り行く。
 やがて東の空から舟がゆったりと、豊かな風を帆に張って現れる。そちらの具合はいかがでしょうか! 問いかけられて手を振り答える。変わりないです、なあんにも! では三日後に伺いますね! こうして我らは、彼の国の者と貿易をする。彼らの麦は地表の麦とは違うのだ。地表の麦は胚を持たず枯れ行くのみで、時折麦を仕入れて我らの暮らしが成り立っている。
 交換は平野の塔で行なわれる。塔の頂で鴉によって物品を双方の地へ送りあう。海神の糸で織った紗は気に入ってもらえたようだ。
 舟が天球をなぞって西へ落ち行くと、一夜のうちに麦穂の海はうっすら消えて元の空へと戻るのだ。あの星空に再び女神が穂を挿すのは、また一年後。





 いつかのエクストラマッチで書いた「スパイカズスパンカー」を思い出す。

 日記に埋没する前に発掘発掘。

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