2008年9月7日日曜日

少女

「少女」

 路傍の石に腰掛けて休んでいると、道の向こうから一人の少女が歩いてくる。少女は胸に茶色のぬいぐるみを抱き、赤のワンピースに赤い靴という出で立ちだ。
 やがて少女が目の前を通る。その可愛らしい装いに似つかわしい精悍な横顔に、私は思わず声を掛ける。
「時にお嬢さん、どちらへ?」
「私は少女を探しています」
 そうして微笑む目尻には疲労の色が浮かんでいる。よくよく見てみれば、痛んだ赤い靴に埃で汚れたスカートのフリル。
「お尋ねしますけど、おじさまはどこに少女がいるかご存知ありませんか?」
「少なくともこの道の先にはいませんよ」そう答えるのが精一杯だった。
「そうですか」
 少女はぬいぐるみをぎゅっと抱締め天を仰いだ。

 ――ひとつだけアドバイスをしましょう。まずは、パパを探しなさい。
 少女はきょとんとした顔をする。しかし、それで良いのだ。






 てんとう虫の隠し刀(?)。使わなかったけども。

 skype中。

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