2009年2月7日土曜日

ビーフステーキサロン

「ビーフステーキサロン」

 まず一皿目。白磁の平皿にドンと乗るビーフステーキ。焦げ目は網目模様、赤黒い肉汁がかすかに溜まっているのが見える。鼻を近づけてみると、思わず涎がこぼれそうになった。
 これはいけないと身を離し、次の部屋へ行く。白塗りの壁に挟まれ歩くことおよそ三分、ようやく辿り着く。サロンの廊下は長いのだ。部屋の造りは先のものとまったく同じで、ステンドグラスの丸天井に白塗りの壁である。そして中央には大理石の台があり、皿が置いてある。覗く。金縁の白皿は一皿目より大きいが、ビーフステーキはと言えば、より小さい。代わりに厚さがある。断面の色のグラデーションがよくわかる。傍らにはパセリが添えられている。次の部屋へ行く。

「こんにちは」
 七皿目を鑑賞しているときに声を掛けられた。牛である。栗毛の肉牛が尻尾をむちのように左右にしならせている。
「いかがでしょう」
 実に素晴らしいと言うと牛は満足そうに頷いた。私は牛と共にサロンの中を巡った。
��彼は人一倍やんちゃな子で、よく仲間の分の草も食べておりました)
��彼女の育った北の大地では、夕暮れになると影が地平線の彼方まで伸びるのです)
��彼は社会主義崩壊の混乱の最中に殺されました。別に食料に困っていたわけではなかったのです。革命を謳う戦士が、どこぞの部族の習慣を真似て儀式を行なうために彼を手にかけたのです)

「なぜそんな話を私に」
「わかりません。けど、あなたになら話しても良いと思いました」
 牛は私を見送っている。


 ***

 この頃はコピペ集を読むのが楽しい。あれを超短編として捉えるとどーだこーだと考えればキリがないのだけども、ともかく楽しい。

 ようやく時間ができそうなので、これからしばらくごりごりと書き物したりじゃりじゃりと読み物したりできそう。よしよし。

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