罪を犯したのか、あるいは逃避の末に自ら望んだのか、記憶はないけれども私は秋に閉じ込められた。
まばらに生える木々は皆枯れているが、背は高く、先端はよく晴れた空に吸われて消えている。その空の彼方から雨のように赤や黄色に染まった枯れ葉が降ってくる。歩けばさくさくと乾いた音がする。土の匂いがする。
遠くから、木を切る音が聞こえる。こーん、こーん、と甲高い音だった。
音の元を辿ってみると、そこにいたのは木こりの男だった。巨大な背中を丸めて根に近い幹に斧を当てている。やがて木は自重に耐えかねて折れた。その様子を私と男は眺めていた。
「家まで運ぶんだ。手伝ってくれんかね」
男と二人で長い木を小屋まで運ぶ。運び終えたら男はその場で木を細かく断ち切る。薪にするのかと尋ねたら、そうだと男は答えた。私はその様子を眺めている。男は慣れた手つきで薪を作っている。
それから数百日、男と暮らした。幾度となく肌を重ねあう間、様々な獣の毛皮を剥ぎ、男と私は冬に備え続けた。しかし冬が訪れる気配はない。
行為はいつも唐突に始まる。男が私を組み伏せる。その間私は枯れ葉がとめどなく降ってくるのを眺めている。まだ私は埋もれないらしい。
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「もうすぐオトナの超短編」たなかなつみ選自由題最優秀賞
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