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2012年11月18日日曜日

チベ物語

「チベ物語」

 ある晩、門前の妖怪小僧はこのような夢を見た。牧草で満ちた緩やかな丘陵と一面の空、牧草を食む動物たち。その中で一人たたずむ精悍な顔立ちの青年は門前の妖怪小僧が見慣れぬ僧衣を着ていた。
 他にも色々な経験をしたような気がするが、門前の妖怪小僧が目を覚ましたときに覚えていたのはこれだけだった。まだ眠たい目をこすりながら、しかし夢で見た青年の横顔だけがなぜだか忘れられずにいた。
「不思議なこともあるものだなあ」
 門前の妖怪小僧は今日も聞きかじりの経を読み上げる。百年間読み続けているが、相変わらず意味はわからない。

2012年4月16日月曜日

(無題2)

��無題2)

 ……一体何が起こったのだろう。気が付いたら私は吹っ飛んでいた。雲を突き抜けコンコルドを追い越し、視界の端に地球の円形を認める。このまま空気摩擦で死んでしまうのか。気が遠のくうちに高度が下がり、懐かしの祖国、故郷、そして我が街、我が家が見えてくる。天文学的な確率の幸運に感謝する。最期がここなら思い残すこともない。が、神様は意地が悪いらしく、私が突っ込んだのは隣家の幼馴染の部屋だった。柔らかい感触と、悲鳴。私は頬を叩かれ、気を失った。

***

 茶林プレゼンツ。
 全ての元凶はこのツイート。
「ochabayashi@isayann そうだ胸に埋めたら張り飛ばされて地球一周してきて胸のクッションで助かったぜっていう話を書 via web」

(無題)

��無題)

 真珠である。親指大の大変立派なものである。あんまり立派だったので祭壇に飾ることにする。浅瀬に作られた大理石の祭壇に飾る。暮れ泥む空。波が寄せて返す。手のひら大の深紅の絹に真珠を乗せると、ちょうど夕陽と重なる。眩く、とても目を開けていられない。高鳴る潮騒は幻聴のようで幻聴ではない。間もなく沈む祭壇、潮位はぐんぐんと、しかし静かに高度を上げていく。私は真珠を拾わなければならない。一度だけ天を仰ぎ見て海に潜る。潮位の上昇速度よりも速く泳ぎ下っていくと間もなく一点の深紅と、それよりもさらに小さい真珠を発見する。深紅に迫るほどにそれは大きくなる。視界の端まで深紅に染まる。次いで、真珠色に染まる。私の手のひらが真珠の表面に触れる頃には辺り一面は真珠の地平である。見上げれば、暮れ泥む空。寄せて返す波の音は幻聴のようで幻聴ではない。音のする方へ歩き出す。凹凸もなく滑らかだった地表が次第に色彩を帯びだす。草地に変わり、木々が生まれ、ほとんど洞窟のような森を歩く。その彼方には常に黄金色の光に溢れる出口がある。潮騒は止まない。幻聴のようでしかしやはり幻聴ではない。歩く。歩き続ける。そうして出口を抜けるとそこは浅瀬である。既に踝は海水に浸っていた。振り返れば森はない。全方位にわたって水平線が広がる。ただし墓石のような大理石が立っている。歩きだす。足元に光るものを見つける。

***

 一行幅の細長い紙に両面印刷してメビウスの輪にしてみて、エンドレスな物語を作ってみやう、という話の流れで。
 しかしこれは長すぎるだろう。(583字)