「ぐしゃ」
それは初めて聞いた音楽。
目を逸らすと、「がらくたの分際で人間みたいなふりをするな」と殴られた。
��**
タイトル競作 ○:1
これを書く前くらいに、山本弘「アイの物語」を読んでいたのでそれに大いに影響されたところがあるのだと思います。はい。
はやかつさんにピンポイントで届いたので、個人的には大勝利。
メイキングはいずれどこかの段階でやる気と余力があれば。
2011年11月16日水曜日
2011年10月3日月曜日
黎明
「黎明」
世界中のごみが集まる北海の最果て島。
目を醒ましたのは僕一人だけのようだった。おなかの綿がはみ出ているけれど、それ以外は対して傷ついていないようだ。目を瞑れば思い出すことはたくさんあるけれど、それは、もういい。
仰向けながら見上げるのは灰色の空。白い翼に黒い嘴を持つ海鳥の群れが視界を横断する。
僕は、生まれたての小鹿のように、立ち上がる。
少しだけ高くなった視点で見渡す世界は、どこまでも続いて見えた。この世にはこんなにもごみが溢れていたのだ。限界まで使い古されたものや、まだ新品同然のものもあるけれど、共通しているのは、それらはもはや誰にも必要とされていないことだけだ。
彼方に一際大きなごみの山がある。そこが島の中心であったようなので、そちらへ向かうことにする。誰か他に目覚めたものが居ることをかすかに期待していたのだ。しかし結局それは叶わなかった。それでも、苦心して山を登る。そうして辿り着いた山の頂で、僕は、ああ、と嘆息をこぼさずにはいられない景色を見る。
豆粒よりも小さな海鳥どもが、黒い嘴を振りおろしてごみを啄ばむ。あるいは群れで空を飛ぶ。その黒さで空は俄かに暗くすら見える。しかしその背後では、今まさに夕日が沈もうとしている。
僕は膝を抱えてその美しい光景に見惚れる。
げえ、げえ、と鳥どもが醜い声で鳴く。
僕は一つの決意をする。
夜が明けたら、新しい国の建国を宣言しよう。ここを新天地にするのだ。
捨てられるのはとても恐ろしいことだとみんな思っているけれど、案外気楽なものなのだから。
だから夜が明けるまでの間、君たちは決して負けてはいけないのだ、決して。
世界中のごみが集まる北海の最果て島。
目を醒ましたのは僕一人だけのようだった。おなかの綿がはみ出ているけれど、それ以外は対して傷ついていないようだ。目を瞑れば思い出すことはたくさんあるけれど、それは、もういい。
仰向けながら見上げるのは灰色の空。白い翼に黒い嘴を持つ海鳥の群れが視界を横断する。
僕は、生まれたての小鹿のように、立ち上がる。
少しだけ高くなった視点で見渡す世界は、どこまでも続いて見えた。この世にはこんなにもごみが溢れていたのだ。限界まで使い古されたものや、まだ新品同然のものもあるけれど、共通しているのは、それらはもはや誰にも必要とされていないことだけだ。
彼方に一際大きなごみの山がある。そこが島の中心であったようなので、そちらへ向かうことにする。誰か他に目覚めたものが居ることをかすかに期待していたのだ。しかし結局それは叶わなかった。それでも、苦心して山を登る。そうして辿り着いた山の頂で、僕は、ああ、と嘆息をこぼさずにはいられない景色を見る。
豆粒よりも小さな海鳥どもが、黒い嘴を振りおろしてごみを啄ばむ。あるいは群れで空を飛ぶ。その黒さで空は俄かに暗くすら見える。しかしその背後では、今まさに夕日が沈もうとしている。
僕は膝を抱えてその美しい光景に見惚れる。
げえ、げえ、と鳥どもが醜い声で鳴く。
僕は一つの決意をする。
夜が明けたら、新しい国の建国を宣言しよう。ここを新天地にするのだ。
捨てられるのはとても恐ろしいことだとみんな思っているけれど、案外気楽なものなのだから。
だから夜が明けるまでの間、君たちは決して負けてはいけないのだ、決して。
2011年9月14日水曜日
月を抱いて眠る
「月を抱いて眠る」
誰かに後をつけられている気がして振り返ると月であった。おいで、と手招きすると、月はスススと降りてきて僕の腕の中で収まった。バスケットボール大の大きさだった。見事な満月で、抱いた腕が仄かに温かい。
僕はソファーに座り、月は僕の膝の上に座る。球面を撫で、特にクレーターの凹んだ部分を掻いてやると月はとても喜ぶ。
テレビでは突然月が消失したといって連日連夜の大騒ぎである。
「帰らなくていいの?」と訊ねると月はぐっと体を押し付け拒否の意を示す。
ある晩、月が夜空を見上げているのを見つけた。三日月である。月は僕に気付くと振り返り、僕に体をぐりぐりと押し付ける。
月を抱いて眠るとき、月の事情というものを考える。きっと僕には伺い知れない事情があるのだろうと思う。
これは決していつまでも続く暮らしではない。
けれど、安心しきった風に体を投げ出す月を見てしまうと、せめて眠っている間だけは、と思ってしまう。
��**
いつまでも胸を揉む話がトップにあるのはしのびない。
誰かに後をつけられている気がして振り返ると月であった。おいで、と手招きすると、月はスススと降りてきて僕の腕の中で収まった。バスケットボール大の大きさだった。見事な満月で、抱いた腕が仄かに温かい。
僕はソファーに座り、月は僕の膝の上に座る。球面を撫で、特にクレーターの凹んだ部分を掻いてやると月はとても喜ぶ。
テレビでは突然月が消失したといって連日連夜の大騒ぎである。
「帰らなくていいの?」と訊ねると月はぐっと体を押し付け拒否の意を示す。
ある晩、月が夜空を見上げているのを見つけた。三日月である。月は僕に気付くと振り返り、僕に体をぐりぐりと押し付ける。
月を抱いて眠るとき、月の事情というものを考える。きっと僕には伺い知れない事情があるのだろうと思う。
これは決していつまでも続く暮らしではない。
けれど、安心しきった風に体を投げ出す月を見てしまうと、せめて眠っている間だけは、と思ってしまう。
��**
いつまでも胸を揉む話がトップにあるのはしのびない。
2011年8月31日水曜日
2011年8月15日月曜日
木になる
「木になる」
ガラスの向こうに脚を置いてきた。壊死だった。
どうせ捨てられるならせめて、「あの高台のポプラの下に埋めてほしい」。彼は果たしてそれをやり遂げた。
以来、なくした脚は二つ、四つ、八つと分かれ、甘い露を吸う。私は潤い、そして声を失っていく。
��**
ツイッターで見かけたお題の勢いそのまま。
ガラスの向こうに脚を置いてきた。壊死だった。
どうせ捨てられるならせめて、「あの高台のポプラの下に埋めてほしい」。彼は果たしてそれをやり遂げた。
以来、なくした脚は二つ、四つ、八つと分かれ、甘い露を吸う。私は潤い、そして声を失っていく。
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ツイッターで見かけたお題の勢いそのまま。
屋根裏帝国と床下の魔物たち
「屋根裏帝国と床下の魔物たち」
鼠か何かが天井裏を駆けたようだったので、クイックルワイパーの柄で音のした辺りを二、三回ほど突いた。静かになった。一応屋根裏を覗いてみると、そこにはミニチュア模型で作ったような都市が一面広がっていた。ナノスケールの人工の太陽まである。米粒よりも小さな者たちが方々から現れては隠れ、私にはよく聞こえない何かを喚き、間もなく飛来した戦闘機がぱちんぱちんと私の額に爆撃を仕掛ける。これはたまらん、と一旦退散する。退散すればさっきの出来事が嘘のように思えてくるが、もう一度屋根裏を覗いてみるのは躊躇われる。とりあえず、とりあえず、と声に出して呟いてみるが次が続かない。とりあえず、どうするのか。私は混乱していた。
夜半、夢の中で私は糊の利いたスーツを着る初老の男性と机を挟んで向かい合っていた。曰く、彼は屋根裏の都市の為政者で、(途中、三十の民族とおよそ四ヶ月にわたる種族の興亡の歴史の解説を挟み、)要するに私と友好関係を結びたいのだという。ちなみに夢枕に立つ技術はおよそ二日ほど前に出来たのだという。
それから三日ほどして、再び夢を見る。三日前の夢で見た男性に似てはいるが別人であるこの若者は、先日の男性の孫であるという。閑話休題、と言って若者は顔を上げる。曰く、神話の御代以来永らく忘れられてきた地底の魔物が近頃活発に蠢き始めているという。ぽかんと口を開ける私に若者は、大真面目です、と大真面目な顔で釘を刺す。そもそも地底というのがどの程度の深さのことを指すのかすらわからない。ということで我が家の間取りと若者たちの世界の測量単位を比較し計算した結果、どうやら床下程度のところだとわかった。「助けてください」と若者は言う。「日夜、万の魔物が洞穴から表れ人々を脅かしております。倒せど倒せど尽きる様子のない魔物ども、我々の防衛線もいつまで保つか。どうか貴方様のお力を」
翌日、完全防護の服装で意を決して床下の蓋を開き、えいやと懐中電灯を突っ込んだ。なるほど確かに何かがいる。おびただしい数の何かがいる。幸いなことにそれらは飛行能力は持っていないようだった。本当に幸いである。赤や黒の米粒どもがうねり、盛り上がり、私を見上げている。虫眼鏡で覗いてみる。目の無いもの、蛍光色の卵を皮膚の下に抱えるもの、姿態は様々あれど押し並べておぞましい。無数の触手が踊り、異形どもの口からは極彩色の粘液が飛び交い、そんな景色が床下一面にわたって広がっている。不意に米粒どもの動きがぴたりと止まり、二つに割れた。奥の方から親指大のナメクジのようなものが現れ、念力で私に語りかけてくる。曰く、彼女は米粒どもの生みの親であり、万物の創造主であるという。私は屋根裏帝国側の事情を伝え、何とか穏便にならないかと一応問いかけるが、ただちに「言語道断」と言い捨てられる。交渉決裂、敵意を顕わにした米粒どもは一様に真っ赤に染まり、続々と山を為し、たちまち床下から溢れそうになる。吹っ飛びそうになる意識をかろうじて保ちながら何とかバルサンを焚くと、がっちりと床下の蓋を閉じる。ガムテープで目張りをする。
その晩、先日の若者が幾分か老けて現れる。曰く、私の活躍で魔物を退けることができたので、その偉業を称えたモニュメントを建築することになったという。目元に涙を湛えている。
その後の数日間は特に何事もなく穏やかに暮らした。ふと思い出してそっと屋根裏を覗いてみると、屋根裏の人々は死に絶えていた。嗅ぎ覚えのある臭いはバルサンである。大方、魔物が湧いたという穴から煙の残りがこぼれたというところだろうか。半分骨組みを露出させたままのモニュメントもあった。
この話を医者の知り合いにしてみると、彼は私の肩を抱いて静かに首を横に振ったのだった。
��**
ドラえもんにもそんな感じの話がありけり。
鼠か何かが天井裏を駆けたようだったので、クイックルワイパーの柄で音のした辺りを二、三回ほど突いた。静かになった。一応屋根裏を覗いてみると、そこにはミニチュア模型で作ったような都市が一面広がっていた。ナノスケールの人工の太陽まである。米粒よりも小さな者たちが方々から現れては隠れ、私にはよく聞こえない何かを喚き、間もなく飛来した戦闘機がぱちんぱちんと私の額に爆撃を仕掛ける。これはたまらん、と一旦退散する。退散すればさっきの出来事が嘘のように思えてくるが、もう一度屋根裏を覗いてみるのは躊躇われる。とりあえず、とりあえず、と声に出して呟いてみるが次が続かない。とりあえず、どうするのか。私は混乱していた。
夜半、夢の中で私は糊の利いたスーツを着る初老の男性と机を挟んで向かい合っていた。曰く、彼は屋根裏の都市の為政者で、(途中、三十の民族とおよそ四ヶ月にわたる種族の興亡の歴史の解説を挟み、)要するに私と友好関係を結びたいのだという。ちなみに夢枕に立つ技術はおよそ二日ほど前に出来たのだという。
それから三日ほどして、再び夢を見る。三日前の夢で見た男性に似てはいるが別人であるこの若者は、先日の男性の孫であるという。閑話休題、と言って若者は顔を上げる。曰く、神話の御代以来永らく忘れられてきた地底の魔物が近頃活発に蠢き始めているという。ぽかんと口を開ける私に若者は、大真面目です、と大真面目な顔で釘を刺す。そもそも地底というのがどの程度の深さのことを指すのかすらわからない。ということで我が家の間取りと若者たちの世界の測量単位を比較し計算した結果、どうやら床下程度のところだとわかった。「助けてください」と若者は言う。「日夜、万の魔物が洞穴から表れ人々を脅かしております。倒せど倒せど尽きる様子のない魔物ども、我々の防衛線もいつまで保つか。どうか貴方様のお力を」
翌日、完全防護の服装で意を決して床下の蓋を開き、えいやと懐中電灯を突っ込んだ。なるほど確かに何かがいる。おびただしい数の何かがいる。幸いなことにそれらは飛行能力は持っていないようだった。本当に幸いである。赤や黒の米粒どもがうねり、盛り上がり、私を見上げている。虫眼鏡で覗いてみる。目の無いもの、蛍光色の卵を皮膚の下に抱えるもの、姿態は様々あれど押し並べておぞましい。無数の触手が踊り、異形どもの口からは極彩色の粘液が飛び交い、そんな景色が床下一面にわたって広がっている。不意に米粒どもの動きがぴたりと止まり、二つに割れた。奥の方から親指大のナメクジのようなものが現れ、念力で私に語りかけてくる。曰く、彼女は米粒どもの生みの親であり、万物の創造主であるという。私は屋根裏帝国側の事情を伝え、何とか穏便にならないかと一応問いかけるが、ただちに「言語道断」と言い捨てられる。交渉決裂、敵意を顕わにした米粒どもは一様に真っ赤に染まり、続々と山を為し、たちまち床下から溢れそうになる。吹っ飛びそうになる意識をかろうじて保ちながら何とかバルサンを焚くと、がっちりと床下の蓋を閉じる。ガムテープで目張りをする。
その晩、先日の若者が幾分か老けて現れる。曰く、私の活躍で魔物を退けることができたので、その偉業を称えたモニュメントを建築することになったという。目元に涙を湛えている。
その後の数日間は特に何事もなく穏やかに暮らした。ふと思い出してそっと屋根裏を覗いてみると、屋根裏の人々は死に絶えていた。嗅ぎ覚えのある臭いはバルサンである。大方、魔物が湧いたという穴から煙の残りがこぼれたというところだろうか。半分骨組みを露出させたままのモニュメントもあった。
この話を医者の知り合いにしてみると、彼は私の肩を抱いて静かに首を横に振ったのだった。
��**
ドラえもんにもそんな感じの話がありけり。
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